#システム設計
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がんは外から来た敵ではない — 生物をシステムとして読み、免疫をゼロトラストとして読む
身近な犬ががんになり、診断を聞きながら考えたことから始まった対話。がんは「悪い細胞」という異物が 外から来たのではなく、細胞がもともと持っている性質(増える・血管を引く)が、抑制を失って露出した だけではないか——という問いを立てた。答えは、ほぼその通りだった。 細胞はもともと増殖したい存在で、多細胞生物はむしろ、その発散的な増殖を押さえつけることで 一つの統率された個体を成り立たせている。がんとは、新しい悪性の機能が付加されたのではなく、 抑制の層が破られて元の性質が剥き出しになった状態である。だから「敵が侵入した」ではなく 「ガバナンスが壊れた」と読むほうが正確になる。 ここから、生物を情報システムとして読み直す議論が続いていく。老化とは何か。生物の目的は インスタンス(個体)の永続ではなく、クラス(設計情報)の永続なのではないか。設計書はどこに 保管されているのか——生殖細胞系列という「聖域」に隔離され、体細胞はそこから作られる使い捨ての インスタンスとして扱われる。エピジェネティクスは何を引き継ぎ、何を引き継がないのか。 DNA には「エピジェネティクスの初期状態そのもの」ではなく「初期状態を生成するための制御ロジック」が 書かれていて、インスタンス再作成のたびにそこから初期化される。 後半は、免疫系を IT システムの防御機構として読み直す。自然免疫はシグネチャ検知(IDS/IPS、WAF の ルール)に、獲得免疫は振る舞いベースの検知に対応する。細胞が自分の内部状態を常に外へ提示し続ける MHC の仕組みは、エンドポイントの継続監視にあたる。そして重要な設計原理が生物から逆引きできる—— 提示と判定を分離せよ。細胞は自分で「自分は正常だ」と判定しない。ただ内部状態を提示し、判定は 外部の T 細胞が行う。判定ロジックを提示側に持たせると、そこを乗っ取られた瞬間に判定ごと欺かれる。 アナロジーの限界も突いた。生物に対応物が薄いもの、対応させると無理が出るものを、その都度 切り分けている。構造的な相似を見つけることと、無理に当てはめることは違う。